STORY03

マネージャーとしての厳しい洗礼

Chapter1:「組織人として生きる」働き方編

営業部門から
グループ経営企画へ

様々な場面で反発が起こり、
大きな亀裂が生まれた

会社経営に少しでも貢献できる部署へと提出した異動願いが受諾され、14年間在籍した営業部門からグループ経営企画部署にマネージャーとして異動しました。そこには、長年、財務部門や総務部門に携わってきた言わば、その道のプロであるメンバーが部下として待ち構えていました。

部下達になめられずに、マネージャーとして存在感を発揮しようと意気込んだ私は、早々にこれまで踏襲してきたやり方の見直しに着手しようとしました。私からの見直し提言をはじめ、様々な場面で反発や無視が起こり、大きな亀裂が生まれ、何度となく言い争いにもなりました。

部下達からすると、これまでの自分たちのやり方を否定された気持ちが湧いたのだろうと思います。

上司として
認められていない屈辱感

自分の意見をメンバーに押し付け
総スカンを食らう羽目に

一方、私はと言うと、自分の考えが通らない自分の指示通りにならないことを、部下たちから、自分が見くびられていると捉え、自身の存在価値の危機だと感じていました。こちらの言い分を上司という立場を利用してメンバーに押しつけようとした結果、私への反発は、日に日に激しくなる一方でした。

自分はマネージャーとして役に立てていないかもしれない。そのことが露呈する恐怖に怯え、周りから上司として認められていない屈辱感に苛まれ、ストレスは最高潮に。

最後には、私の提案に部下がいちいち反発することに業を煮やし、「つべこべ言わずに、一回やってみろ!」「やってから良いか悪いかは判断できるだろう。やる前から悪いと決めつけるな!」と強引にこちらの言い分を聞かせようとし、その後、総スカンを食らう羽目にもなりました。

その出来事以来、会社に向かう足が、どんどん重くなっていったのを憶えています。この頃、精神的にも追い詰められ、色々なことに無気力になってしまっていました。

存在価値の危機から、
苦しみに向き合い続ける

コーチングで見えてきた思い込み
互いの強みを活かし合う関係へ

追い詰めに追い詰められ、その頃も継続して受けていたコーチングのテーマでは、何度もこの苦しみについてコーチと話しをしました。
「自分は何に苦しんでいるのか?」ということを必死に考え、自分と向き合いました。

その結果、「業務全般の知見において、自分は部下よりも劣っており、馬鹿にされているのではないか?加えて、自分は無価値なのではないか?」という恐れが自分の中にあることが分かりました。疑念を否定したいが為に、部下達に必死にマウンティングをしていたのだとも気がつきました。

さらに、その奥には「マネージャーは、部下たちよりも全てにおいて優れ、質問されたことには即座に答えられないと、優秀とは認められず、価値も無い」という思い込みが、自分を苦しめているのだと思われました。

そう気づいた時に、「自分と部下とでは経歴が違うのだから、彼らの得意分野で勝るなんて土台無理だな」と諦める気持ちが湧いてきました。
それであれば「自分は、自分の強みを活かしたマネジメントを行い、部下の方が得意なところは部下に任せよう」「自分と部下がお互いの強みを活かし合う関係にしていかないと、身が持たないな」という気持ちにもなれました。

リソースを活かした組織運営

あるべきマネジメントよりも、
その人らしいマネジメント

「自分が部下たちよりも得意なところは何か?」と考えてみると、「戦略性や俯瞰力を活かした全体統括と、営業経験を活かしたグループ子会社との良好な関係づくり」であることが見えてきました。

そこからは、自分で何でも網羅しようとはせずに、自分の強みである戦略性や営業観点を活かした全体統括を行いながら、細部に関しては部下の意見や能力を活かしていくという組織運営に移行していきました。

すると、ストレスがビックリする程、すっ飛んで行ったことを今でも鮮明に覚えています。

この一連の経験を契機として、私のマネジメント態度を「あるべきマネジメントをしようとするよりも、自分の強みや能力・経験・キャラクターといったリソースを活かしたマネジメントを行う」というものに換えました。

私は今も、この信条から、コーチとして関わるビジネスリーダーのクライアントの方々に「あるべきマネジメント」よりも、リソースを活かした「その人らしいマネジメント」の発揮をお薦めしています。

Key Message

自分を苦しめていたものは思い込みだった