STORY04

経営者の在り方とリレーション構築

Chapter1:「組織人として生きる」働き方編

経営者の在り方から
学んだこと

正解か否かを考えすぎると
先に進めなくなる

異動したグループ経営企画部署では、グループ子会社の経営支援が主な業務で、延べ30人の子会社社長とお付き合いし、経営をサポートしていくものでした。

そこでお会いしたお一人の子会社社長との関わりが、私の経営者観や経営観を育ててくれました。その方は際だって志が高く、肝が据わり、また会社の行く末と社員の活躍に本気で心を砕いておられる経営者でした。その方のあり方を通して、経営とはなんたるかを身をもって教えて頂く機会にもなりました。

その一方、他の会社では、親会社の顔色ばかりうかがっているあまり、幹部や社員との溝ばかり深まり、メンバーそれぞれは優秀なものの、人と人、チームとチームが諍い合い、士気の低下を起こし、成績も悪化していく様も見てきました。それはまさしく、1+1=2どころか0.5になってしまっているありさまでした。

ここで学んだ印象的なことは「経営には正解はない、故に正解か否かを考えすぎると先に進めなくなる。」というものでした。
信ずるものをまずは選択することが大切であり、企業の可能性、将来像を経営者自身がどれだけ信じられているかが、経営の成否を決まることを目の当たりに出来ました。

M&Aのギクシャクした
親子会社間の関係に取り組む

何度も迷走しそうになる親会社
素直に話し合いに望めない子会社

グループ経営企画部署では、M&Aで子会社化した2社と親会社とのグループ会社間の一体感醸成にも取り組みました。そこで経験したことは、M&Aをした後の親会社と子会社とが一致団結していくことの難しさでした。

親会社としては多額の出資をしたことの是非を、M&A後の子会社実績や、グループとしてのシナジー発揮によるグループ業績で株主や市場から監視されます。その為全体最適という名の下に子会社の独自性よりも親会社への順応を強権発動していったり、逆に子会社との軋轢を恐れるがあまり気を使いすぎて、親会社としてのリーダーシップを発揮できなかったりと、何度も迷走しそうになりました。

一方、M&Aされた子会社では、社員の中に経営陣や親会社に対する疑心暗鬼や、元親会社から売却されたという裏切られた気持ちや悲しさ、絶望感が渦巻いていることが多く、なかなか素直に親会社との話し合いに望めないという難しさもありました。

問題の奥に潜む
コミュニケーションのこじれを紐解く

親会社と子会社とで、まるで綱引きをしているような状態で、業績は不振を極め、「M&Aをしたことは失敗だったのではないか」という陰口まで社内には流れるありさまでした。ここでの私は、一貫して親会社と子会社間の葛藤・問題の解決役として活動しました。

ついつい感情的になり、騒然となったり、冷戦状態になったりする話し合いの場を、両者にどんな考えや思いがあるかを話し合い、相手に対する思い違いを解いてくための仲介役を務めました。

これらの経験を通して「問題の奥に潜むコミュニケーション(組織内・組織間)のこじれを解決するためのスキル」を体得することができ、独立後に携わった組織改革コンサルティングの中でも活かすことができました。
今現在も、ビジネスリーダーに対してコーチとして関わる際にも、クライアントが抱える“こんがらがった”葛藤を解いていくサポートに役立てられています。

10年後の企業像を
検討するプロジェクト

それぞれ立場の違いから
話が噛み合わず、話し合いを中断

社内では「10年後の企業像を検討していくプロジェクト」の参画メンバーにも抜擢され、会社の目指すべき姿を経営陣に答申する仕事も行いました。

これは、生産、営業、開発、研究、管理といった様々な部署の課長クラスのメンバー合計10名程度が選抜して集められ、会社が10年後にはどんなビジネスをドメインとしていき、そのためにこれからの10年をどのように経営していくべきなのかを検討していくプロジェクトでした。

メンバーはそれぞれ立場や置かれている環境が異なるため、当初は話しが噛み合わずに、何度も話し合いを中断せざるを得ない状況で、予定されていた経営陣への答申日に間に合わないのではないかとまで心配された程でした。

「ここに居る誰もが、同志である」という
実感が生まれたプロセス

それでも、異なる考えや意見を持つ者同士が、諦めずに妥協もせずに討議を続けられたのは、「ここに居る誰もが、ハウス食品を愛し、ハウス食品の成長を願っている同志である」という実感が持てたからでした。

結果、無事に答申へと持ち込む事が出来、ここでの答申はその後、全社戦略にも取り入れられ、実現に向けての一歩を踏み出しました。

一連の経験は、経営全体の流れや仕組みに対する知見から来る俯瞰した視点と同時に、あるべき論だけでなく現場の状況・状態にも則した視点も兼ね合わせるという、ビジネスリーダーに対して関わる際の私のスタンスに大きく影響を与えてくれました。

Key Message

「あるべき論」に留まらない